6月27日(日) 10:50~

義歯安定剤と除去方法に関する研究

柿谷 笑菜1,2),河野 舞2),金子 潤2,3)

1) 医療法人社団碧空会 ユアーズ歯科柏クリニック
2) 千葉県立保健医療大学健康科学部歯科衛生学科
3) 明海大学保健医療学部口腔保健学科

A study on denture stabilizing agents and their removal methods
Kakitani Emina1,2), Kono Mai2), Kaneko Jun2,3)
1) Aozorakai, Yours Dental Clinic at Kashiwa
2) Department of Dental Hygiene, Chiba Prefectural University of Health Sciences
3) Department of Oral Health Sciences, Meikai University School of Health Sciences

Ⅰ.目的

今後高齢化が進行し歯科に通院困難な人に対し、義歯安定剤を使用する症例の増加が考えられることから、歯科衛生士は患者への清掃指導も必要になると思われる。本研究は、義歯安定剤の適切な清掃方法を検討することを目的とした。

Ⅱ.材料および方法

義歯床用アクリルレジンを重合し被着体とした。使用した義歯安定剤は新ポリグリップSa2®(クリーム)、新ファストン®(パウダー)、クッションコレクト®(クッション)とした。各義歯安定剤はう蝕検知液(acid red)にて着色した後に、被着体に直径1.5cm、厚さ2mmで塗布し、1時間経過後に除去試験を行った。除去方法は、①歯ブラシで150gの強さで10回往復、②ガーゼで150gの強さで10回往復、③水流下5分、④義歯洗浄剤に浸漬5分、⑤義歯洗浄剤後に水流下5分の5種類とした。義歯安定剤の残留量測定は、各条件における除去前後に歯科用測色計(ShadeEye,松風)を用いて3回測色し、色差⊿Eを算出して比較した。統計解析はEZRを用い、Steel-Dwassの多重比較検定を行った(α=0.05)

Ⅲ.結果と考察

クリームにおけるガーゼ10回の41.8(±7.9)と洗浄剤の8.9(±11.2)に有意差が認められた。ガーゼ10回は洗浄剤後の水流5分の16.6(±6.1)と有意差が認められた。ブラシ10回の50.6(±8.7)と洗浄剤の間に有意差が認められた。またパウダーにおけるガーゼ10回の50.0(±7.4)と洗浄剤の5.0(±6.7)に有意差が認められた。クッションにおいてはどの除去方法にも有意差は認められなかった。
クリームとパウダーにおいては義歯洗浄剤のみでは除去されにくいことが明らかとなり、物理的清掃の必要性が示された。クッションは組成が非水溶性ポリマー、溶剤、剥離剤等であり、義歯粘着剤と異なることが他よりも除去を困難にする可能性があると考えられる。

Ⅳ.結論

各義歯安定剤に合わせた清掃方法を示すことは、義歯使用者や介助者、その他多職種に対する今後の指導の一助になることが示唆された。

大会事務局

明海大学 保健医療学部 口腔保健学科 担当:金子 潤
〒279-8550 千葉県浦安市明海1丁目
TEL 047-374-3881